【新任教員の紹介④】井上正子先生(英語)

言語文化学科では今年、4人の新しい先生を迎えました。今回は、英語の井上先生をご紹介致します。

<Q1> 「お名前」をお教え下さい。
井上 正子(いのうえ まさこ)です。

<Q2> 「ご専門(あるいは担当科目)」をお教え下さい。
1920年代のニューヨーク・ハーレム地区ではじまった文化運動ハーレム・ルネサンスと英語圏カリブ文学を中心に研究しています。学院大では英語圏文学と文化で考えるジェンダー・スタディーズも担当しています。

<Q3> 最近嬉しかったことは何ですか。
学院大に就職できたことです。

↑奇跡のような青空が広がる真冬のヒースの丘(2013年12月)

<Q4> 研究者(あるいは教員)を志したのはいつですか。
わたしは社会人経験を経て研究の世界にはいりましたが、きっかけのひとつにニューヨークでの異文化体験があります。留学先の大学に隣接する公園で、浅黒い肌の女たちが白い赤ちゃんの子守りをしているのを見て、ショックを受けたことをいまでもよく覚えています。もともとジェンダーや人種問題に関心があったのですが、有色の女たちが白人中産階級の共働き世帯を支えるために低賃金労働を余儀なくされている現実を知り、動揺したのでしょうね。米国では、中産階級の白人が移民や有色女性の子守りを雇うことがよくあるのですが、結果として肌の色や言語文化の違いにもとづく経済格差、女性格差が助長されているのではないか。ナイーヴすぎるかもしれませんが、そう思ったんです。この頃、いろいろな文化的背景を持つバイタリティ溢れる人たちに出会って、日系や中国系、韓国系アメリカ人、ターバンを巻いたインド系、ヒスパニック系、カリブ系住民からたくさん刺激を受けました。大学の授業では、ハイチ系アメリカ人作家エドウィージ・ダンティカのBreath, Eyes, Memory(邦題『息吹、まなざし、記憶』)を読んでいて、西洋とアフリカの言語文化が混じり合うカリブ海の「クレオール」という文化現象に惹かれていきます。先生にそのことを伝えると、「ファンレターを書くといい。アメリカの作家は返事をくれるから」とおっしゃる。半信半疑で出版社に手紙を送ると、ほんとうに作家本人から直筆の返事が届いたからびっくりです。うれしくって何度もなんども手紙と小説を読み返して、いつかダンティカやまだあまり知られていないカリブ系作家の作品を翻訳して日本の読者に紹介したい、と思うようになりました。とは言っても何者でもないわたしが出版社に翻訳原稿を持ち込んだところできっと相手にしてもらえませんよね。それならいっそのこと、専門家になったらどうだろう・・・(!!)。かなり無謀な思い付きでしたが、雑多な人種や文化が出会うニューヨークの下町で受けた刺激が、いまのわたしの下地を作ったことは間違いなさそうです。

<Q5> 学院大(生)のよいところをお教え下さい。
案外(?)まじめなところ。

<Q6> 赴任以来、「なんでやねん」と思わずツッコんでしまった出来事はありますか。
着任式当日に骨折し、全治一ヶ月と診断されたことです。ところが骨折したのが足の親指だったので、踵に重心をかけて歩くだけでもじんじん痛むほどなのに、誰も気づかないし心配もしてくれない(笑)。それにしても、生まれてはじめての骨折を晴れの舞台の日にしなくても・・・と自分で自分にツッコみをいれたくなる出来事でした。

<Q7> (遅くなりましたが)五月病に悩む学生へ一言、「こうしてごらん」。
新しい環境になかなか馴染めず、孤独や行き詰まりを感じることがあるかもしれません。そんな時、日常から少しだけ離れてみるのはどうでしょう。川べりの散歩でも、サイクリングでも、地下鉄で街にお出かけでも、国内外のひとり旅でも、なんでもいい。出かけた先で、人でも物でも景色でも、偶然の出会いを楽しんでみてください。わたしの場合、海外にいても行き詰まりを感じると、ふらっと鉄道の旅に出たくなってしまいます。写真はエミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』の舞台となった英国ヨークシャー・ハワースにあるトップウィズンズという廃墟を訪ねた時のもの。出発地点のブロンテ博物館から往復6時間ほどかかるので、夕暮れまでに宿に戻れるかどうかうろうろしながら考えていると、偶然通りかかった地元トレッキングチームのリーダーが「一緒に来るかい?」とお声をかけてくださる。彼らのおかげで無事に目的地まで辿りつけただけでなく、パブでのクリスマス・ディナーまでご馳走になり、感謝の気持ちでいっぱいです。仕事に追われて気持ちに余裕がない時期でしたが、旅先で見知らぬ人たちの思いやりに触れて、自分を見つめ直すこともできました。なので、ふらっと小旅行はおススメです。ただし、くれぐれもセキュリティ対策は万全に。