古書の魅力

今日話した内容は忘れてもいいです。しかし、古書を触り、感じた記憶だけは留めておいてください。皆さんはこれから一生、古書を触るチャンスがないかもしれません。

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金永昊先生の原典講読の授業では、随筆・小説・新聞など様々なジャンルの韓国語で書かれた本を読んでいますが、今日の授業では少し別の話題に移りました。文禄・慶長の役を通じて朝鮮から日本へもたらされた書物や印刷技術の話、そして日本での翻訳・翻案の話、それと併せて、漢籍や和古書を実際に触り、その魅力を感じてもらいました。

まず、「朝鮮籍では、2行で書かれたものと1行で書かれたものはどんな違いがあるか」という質問があり、「1行で書かれたものは本文、2行で書かれたものは注釈」との説明がありました。それに加えて、〇を付けたところは、漢文でもハングルでもなく、当時の朝鮮人が漢文を解読するために付した特殊な記号、つまり「口訣」というものだそうでした。日本でも片仮名は同じような発想で生まれたようで、このようなところにも日韓の考え方の共通性が見られると思いました。

これから一生古書を触るチャンスはほとんどないと思いますが、もし、あったとしてもマスクを被ったり、手袋をしたりしなければならないそうです。しかし、金永昊先生は、「それでは古書の魅力を直接感じることが出来ないため、いくらでも素手で触っていい」とおっしゃいました。その代わり、ページをめくる時には唾を付けてはいけないそうです(下図参照)。

どうして左下の矢印のところだけ黒いでしょうか。人々はこの本を今で言うとレンタルショップから借りて読み、指に唾を付けてページをめくったのでしょう。どれだけたくさんの人が読み、ページをめくったのでしょうか。我々も唾を付けてページをめくると、病気が移るかもしれないそうですが、果たしてそうでしょうか(笑)。また、虫食いの跡も見られます。湿度が高い地域で保存された本は虫食いが多く、低い地域で保存された本は虫食いが少ないそうです。虫と卵を簡単に殺せる方法として、古書をラップで巻いて電子レンジに入れるという裏技もあるそうです。

特に日本の古書は挿絵が多いです。現代の漫画文化の原点は、このように豊富に盛り込まれた挿絵にあるそうですが、びっくりしたのは本文・振り仮名・挿絵までこんなに細かく板木に一々掘って、印刷したということです。特に、本を開いた状態で挿絵を鑑賞するためには、板木を2枚利用して掘らなければならなかったことが興味深かったです。

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 最後に、古書の保存について嘆かわしい事実を教えられました。それは、例えば、五巻五冊の書物の場合、全巻揃ったことで重要な意味を持つことになります。しかし、全巻揃った状態だと値段が高くて、販売(業)者にとってはなかなか販売できないため、ばらして1冊ずつ売ってしまうケースがあるそうです。そうすれば、古書に少しだけ興味がある人でも買いやすいし、販売(業)者も古書を売りやすいそうです。しかし、そうなると、何百年も一緒にいた兄弟が別れてしまうようなことになり、一度別れた兄弟はいつ再会できるか分からなくなります。もちろん、古書の販売は重要であるとはいえど、バラバラではその重要性がなくなってしまいます。

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