新任教員の松谷基和先生の紹介!

<Q1> 「お名前」をお教え下さい。

いきなり、名前を聞かれるのも不思議な感じですね。松谷基和(まつたに もとかず)です。

松谷先生1

<Q2> 「ご専門(あるいは担当科目)」をお教え下さい。

朝鮮半島の近現代史を主にやっております。特に19世紀末に朝鮮半島に入ってきたキリスト教(プロテスタント)の普及過程や、それが現地の社会や文化に与えた影響について関心を持っています。また、キリスト教や宣教師を通じた朝鮮とアメリカ、日本との人的・文化的な交流にも関心があり、最近は東北学院の初代院長である押川方義と朝鮮の関係についても調べています。

 

<Q3> 好きな食べ物は何ですか。

大学でこの種の質問を受けたのは初めてですね。私の好きな食べ物を知って喜ぶ人なんているとは思えません(笑)。私は出されたものはなんでも感謝して頂きます。

 

<Q4> 好きな映画を教えてください。

映画なら『炎のランナー』です。ミッション系の本学の学生、とりわけスポーツが好きな方にはぜひ見て欲しいですね。人は何のために走るのか、何のために競争するのか、そして競争に勝って手にした栄光には何の意味があるのか、など考えさせられる内容です。また宗教的寛容、人種差別、ナショナリズムといった今日のグローバル社会でも頻繁に論じられるテーマも随所に盛り込まれており、非常に中身の濃い映画です。

それと映画ではありませんが、1970-1980年代にNHKで放映されたアメリカのドラマ『大草原の小さな家』もいいですよ。最近、ようやく日本でも復刻版のDVDセットで発売されましたのでネットで見つけて買いました。これも、単なる家族愛の話でなく、貧富の格差、老いと病、暴力と戦争、個人と共同体といった社会的なテーマが盛り込まれており、誰が見ても自分の関心に引き付けて楽しんで見ることができます。

韓国・朝鮮の文化を担当している者としては、何か韓国映画にも言及しないとまずいですかね。数年前の映画ですが『国際市場で逢いましょう』は良かったです。激動と苦難の韓国現代史を知っている人間であれば、涙なくしては見られません。日本で紹介されるK-Popや韓流ドラマのスターたちを見ていると華やかで活力に満ちた韓国ばかりを想像しがちですが、この華やかな社会の背景には大変な苦労の歴史があります。そうした韓国社会の別の側面を知る上でも日本の韓流ファンにはぜひ見て欲しいです。

 

<Q5> 最近嬉しかったことは何ですか。

本学に赴任したことです。私は以前から東北地方にあり、かつ専門である韓国・朝鮮に関する科目を担当できる大学で働きたいと思っておりました。世の中のことであれば、アメリカの大統領選挙でサンダースが全国的に若年層から幅広い支持を集めていることです。20代、30代の若者が、70代の政治家の語る理想に共鳴して立ち上がる国には希望を感じます。

 

<Q6> 感銘深く読んだ本と学生に推薦したい本をお教えください。

いろいろありすぎて困りますね。まず、学生さんに勧めたいのは、同世代の本だけでなく、一世代二世代前の本を読むことです。そうでないと、上の世代の人と何ら共通の知識や感覚を持たなくなり、その結果、自分と同じような感覚を持つ同世代の人や年下とばかり話すことしかできず、自分の世界を広げる機会を失います。いきなり何世代も時間や空間を飛び越えた世界的な古典や名著に挑戦することはできなくとも、自分の両親や祖父母の世代に流行っていた本を読んでみるだけでも意味があると思います。つまり、時代遅れの本を読めということです。

私が学生時代(1990年代)に読んだ時代遅れの本のひとつに『人間の條件』(五味川純平著)という長編小説があります。これは1955年に出版されて以降、累積で一千万部以上売れたという超ド級の大ベストセラーです。日本が中国大陸で行った戦争の醜悪さ、戦争に動員された兵士や労働者が直面した不条理、そしてそれにより破壊されていく人間性といった重苦しい内容がテーマであり、決して楽しい本ではありません。しかし、かつては日本でもこうした重いテーマの本が、大衆小説として幅広い層の人が読んで、少なからず問題意識を共有していたことを思うと感慨深いです。昨今の日本社会には、こうした過去の記憶がまったく希薄になっているようで不安です。

 

<Q7> 研究者(あるいは教員)を志したのは いつですか。

いつと言われても難しいですね。少なくとも、学部時代の私には、大学院に進むとか研究者を目指すとかいう考えは全くありませんでした。何となく卒業し、深い考えもなく商社に就職して二年ほどサラリーマン生活を送りました。しかし、うまくなじめず飽きてしまい、会社を辞めました。辞めた後に、大学院(修士課程)の試験を受けて、韓国の政治や歴史を学び始めました。その後、アメリカの大学院に進み、勉学を続ける中で、ようやく研究が楽しいと思えるようになり、博士学位を得たことで自分も研究者としてやっていけるかなあと思い始めました。最初から明確な志があったわけではありませんが、目の前に与えられた機会を生かして自分なりに頑張っていたら自然に道が開かれたというのが正直なところです。

 

<Q8> 学院大(生)のよいところをお教え下さい。

着任一か月程度で、学院大(生)を語ることはできませんよ。もっとも、私は常に長所と短所はコインの裏表の関係だと思っておりますので、何か褒めても裏がありますよ。例えば、私が「おとなしくて素直」と褒めるようなことがあったら、その裏には「消極的で向上心が弱い」と疑って下さって結構です(笑)。

 

<Q9> 学生時代に印象に残った先生について教えてください。

これまた、いろいろおります。修士課程時代に、私が大学を辞めようと思った時に引き留めてくださった先生、アメリカでの博士課程時代に公私ともにお世話をしてくれた先生、いろんな先生の顔が浮かんできます。いずれにしても、私はそれらの先生方の学問のみならず、人格や立ち居振る舞い(いわゆる背中でものを言う)に教えられることが多かったです。もっとも私は眺めて感動するだけで、自分がそれを真似することは出来ないのですが、そうした先生方に会えただけでも大学の世界にいて良かったなと心から思います。

 

<Q10> 韓国でもアメリカでも生活の経験がおありと聞きました。異文化“誤解”のエピソードがあればお教え下さい。

学部生の時、韓国に交換留学しました。留学して間もない頃、親しい韓国人の友人の家に招かれました。そこで、友人の母親から「親元を離れて留学に来ているから、お父さんやお母さんが恋しいだろう?」と尋ねられました。私は、即座に「いや、全く恋しくなんてありません。むしろ、親元を離れて暮らした方が、自由で解放感があって楽しいですよ」と元気よく答えました。すると、その母親は血相を変えて「なんだって、そんなことを言うもんじゃないよ。親に対して恩知らずだ」と怒ったのです。日本であれば、「おお、逞しくて頼もしい若者だわねえ」と褒められたかもしれません。しかし、親子間の「孝」を重視する儒教社会の伝統が残る韓国社会においては、私のような物言いは、叱られることはあっても、褒められることはないのです。留学して日の浅い私にはこの辺りの日韓の文化の差異が見えていなかったのです。この経験から学んだ私は、その後は、この種の質問に対しては、「はい、恋しくてなりません。寝ても覚めても父上様、母上様の面影が浮かびます。志を果たして、いつの日か親元に帰り、孝行を尽くしたいと思います」と真顔で応えられる智恵と度胸が身に着きました。こうした面白い異文化体験をするためにも、韓国に留学される方は単に同世代の友人と付きあうだけでなく、友達の家族や親戚など異なる世代の人とも積極的に話して欲しいですね。

アメリカでのエピソードもいろいろありますが、省略しましょう。

 

<Q11> 赴任以来、「なんでやねん」と思わずツッコんでしまった出来事はありますか。

どうして質問が関西弁風なんですか?まずは、そこにツッコみたいです。私は福島人なので、こういう形の質問を受けると、福島弁で返したくなります。

あんだの質問は福島弁さ翻訳すっと、「学院さ来てがら、『なしてほどごどやってんの?おがしいんでね?』って思ったごと、なんかあっかい?」つうことだべ?

んだこっちゃ、ちっとおがしねって思ったことあったない。学院さ来て、最初に新入生のオリエンテーションキャンプっつうのに行ったんだげんちょ、せっかく新入生同士で泊りでキャンプさ行ったのに、友達と遊んだり、先生としゃべったりする時間はほとんどねくって、みなして床さ寝っ転がって履修計画作るのに何時間もかけてんのない。いやいや、あれは、もったいねえない。わざわざ泊りさ来たんだから、昼間がら一緒に運動したり、遊びさ行ったりしたらいいべした。それと、リーダーつう人たちが、リクルートスーツ着てんのも、なんだか「お仕事」してるっつう感じで違和感あったない。学院の学生はまじめなんだかなんだかわがんねえけど、もうちっと、楽しく学生生活スタートさせっぺで。われらーのがくいーん♪」

 

<Q12> 五月病に悩む学生へ一言、「こうしてごらん」。

五月病ですか。自分がかかった経験がないので、助言らしいことは申せません。ただ、気の病について一般的に言えることだと思いますが、病になるのは、かかった個人にのみ原因があるのではなく、その方を取り巻く社会的な環境によるところも大きいのではないかと思います。言い方を変えれば、この世の中がそもそも歪んでおり異常な面がありますから、この曲がった世界に生きていて憂鬱になったり、虚しくなったりすることは当然であり、逆にそれは正常な人間である証だと思います。この世が闇ばかりとは申しませんが、闇を感じて、光を求めて苦悩するのは、人間の人間たるゆえんだと思います。ちなみに、皆さんが入学式で頂いた聖書の中にはこんな言葉がありますよ。「神の御業を見よ。神が曲げたものを、誰が直し得ようか。順境には楽しめ、逆境にはこう考えよ。人が未来については無知であるようにと神はこの両者を併せ作られらた、と」(コヘレトの言葉7:14)

松谷先生2

【学生からも一言】田中 杏奈(言語文化学科3年)

松谷先生は本当にユニークな方です。第一印象は、良い声で話す先生。

先生は、「学生がどんなことに興味があるのか」「今流行していることはなにか?」など私たち世代の出来事や考えにも関心を持っているので、とても話がしやすいです。
また、たまに熱く語ることがあるので話が長くなることもあります…。しかし、毎回「なるほど!」と思うようなことを教えて下さるので、先生といる時間はほんとに楽しいですし、先生の授業を受けることで、考えも広がります。