2020年度スクーリング情報⑦【日本の言語文化】課題図書紹介

課題図書紹介 【日本の言語文化】 担当:房賢嬉先生

・荒川洋平『日本語という外国語』(講談社現代新書、2013)

・石黒圭『日本語は「空気」が決める』(光文社新書、2013)

いきなりですが、もしみなさんが外国人に次のようなことを聞かれたら、どう答えますか?

「私は田中です」と「私が田中です」はどう違うの?

「おいしそうだ」と「おいしいそうだ」はどう違うの?

「月(げつ)、火(かー)、水(すい)、木(もく)」の「火(か)」は、なぜ伸ばして読むの?皆さんにとって日本語は、もはや当たり前のものになっていて、これらの質問にどう答えればよいかわからないという方も少なくないでしょう。日本で生まれ育ち、母語として日本語を身につけてきたみなさんは、日本語を「国語」として学んでいます。国語の授業では、すでに知っている日本語を「文法」という視点で整理・分析する方法を学びます。一方、日本語を母語としない人は、「外国語」として日本語を学んでおり、その過程は母語話者とは逆のプロセスを辿ります。つまり、話す・書くための日本語(文法や表現)を学び、次第にそれを使いこなせるようになっていくのです。

『日本語という外国語』の著者、荒川洋平さんは「外国語」という視点で日本語を眺め、日本語とはどういう言語なのか、日本語を教えるとはどういうことなのかについて書いています。日本語や日本語教育に興味のある方はぜひ読んでみてください。日本語を母語としない人の視点に立ち、意識的・客観的に日本語を眺めることで、これまで見えてこなかったことが見えてくると思います。

2冊目の本は、『日本語は「空気」が決める』です。日本語を上手に使うためには、語彙や文法など、形式を知る必要がありますが、それだけでは不十分です。話し相手や場面に合わせてコミュニケーションの取り方を調整する能力も必要なのです。みなさんの普段の言語生活をふり返ってみてください。話し相手や場面によって話し方を無意識に(あるいは意識的に)変えていませんか。例えば、「目上の人とは敬語で話し、友達とはタメ口で話す」、「作文で使う言葉と話すときに使う言葉を使い分ける」といった具合です。自分を指すときだって、カジュアルな場面では「オレ」を、フォーマルな場面では「わたし」を使うなど、空気を読んでその場にふさわしい日本語を選んでいるのではないでしょうか。このように、日本語は人間・社会・文化と深く関わっていて、切り離して考えることはできません。

 2冊とも日本語に関する本ですが、『日本語という外国語』は主にことばそのものを扱っており、『日本語は「空気」が決める』は、ことばと社会の関わりや個人が使うことばを扱っています。日本語を眺める視点は異なりますが、日本語という言語をより深く理解するための様々な見方を提供してくれると思います。

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