スクーリング最終案内(注意事項有り)

2018年もあっという間に2ヶ月が過ぎ、言語文化学科のスクーリングまであと1週間を切りました。以下のタイムスケジュールをご覧ください。なお、スクーリング当日はキャンパス内の生協も学生食堂もお休みです。必ず各自で昼食を用意してきてください。

      ※      ※      ※

日時:2018年3月3日(土)午前10時10分より
会場:泉キャンパス2号館224教室ほか

Ⅰ.10:10~10:50 学科長挨拶、学生の自己紹介

Ⅱ.11:00~11:50 〈課題2〉に関するセミナー part1
1.32A教室「ことばの分析」(岸浩介先生)
2.32B教室「考えること・表現すること」(文景楠先生)
3.32C教室「ことばの習得と教育」(渡部友子先生)
4.32I教室「ことばとコミュニケーション」(小林睦先生)
5.32J教室「日本語学と日本語教育」(佐藤真紀先生)

12:00~12:50 <昼食>

Ⅲ.13:00~14:55 学びのオープンキャンパス(4年生による卒業論文発表)
1.伊藤美穂「夢を売るテーマパークの裏側 ―東京ディズニーランドにおける労働問題」
2.渡辺肖「教科書からみる竹島に関する記述研究―昭和と平成を中心に―」
3.武中智穂「中学生にアルファベットの書き方を指導する方法」
4.長澤英里香「女性の美しさはどこにあるか」
5.齊藤ゆみ乃「ベトナム語母話者による日本発音協働学習の試み」

Ⅳ.15:10~16:00 〈課題2〉に関するセミナー part2
1.32A教室「文化のしくみ」(津上誠先生)
2.32B教室「日中韓の言語文化」(原貴子先生)
3.32C教室「英米の言語文化」(井上正子先生)
4.32J教室「独仏の言語文化」(宮本直規先生)

Ⅴ.16:10~ アンケート回収及び解散

※本を読んでその内容を的確にまとめることは、入学後の勉学の中で必要とされる重要なスキルです。課題(2)のPART1とPART2への取り組みの中で、その練習をしてください。

では、当日みなさんにお会いするのを楽しみにしています!

スクーリング情報⑩【ことばの分析】課題図書紹介

【ことばの分析】課題図書紹介           担当:岸浩介先生

 私たちは普段から何気なく「ことば」を使って生活しています。この「何気なく使っている」という事実があるため、「ことば」の使用はいわば「当たり前のこと」として見過ごされがちですが、少し視点を変えて考えてみると様々な問いが浮かんできます。いくつか例を挙げてみましょう。

 例えば、私たちは、今まで一度も発したことのない文を発することができますし、今まで聞いたことの無い文であっても理解出来ます。これはいったいなぜなのでしょう。また、私たちは、子供の頃に日本語の文法規則を誰からも教わらずに育ったにも関わらず、自由に日本語を使いこなせています。なぜこのようなことが可能なのでしょう。確かに国語の授業やテレビ番組などで「こういうときにはこういう日本語を使う」という風に「正しい日本語の使い方」を部分的に教わる、あるいは知識として取り入れることはありますが、果たしてその知識だけでこのようなことは可能になるでしょうか。

 次に外国語について考えてみましょう。「英語の文を作るときは、こういう順番で単語を並べる」とか「この形容詞はこの名詞を修飾できない」ということは習うことがありますが、「『なぜ』そうなっているか」についてはどうでしょう。「英語の文法にそういう規則があるからだ」という説明を受けることがあったかもしれませんが、ではその「英語の文法」に「なぜ」そのような規則があるのでしょう。また、英語と日本語では多くの相違点が見られると言われますが、共通点は本当に存在しないのでしょうか。

 上で述べたような問いに解答を試みるのが言語学の目標です。もちろんここでの問いは、わたしたちの「ことば」について問題にされることのほんの一部であり、様々な問題が「ことばの研究」の考察対象になりえます。これも「ことば」ということば自体がとても広い意味を持っており、各国の文化研究や外国語習得論、さらには脳科学といった様々な領域と密接に関連しているからです。スクーリングの課題図書として挙げた2冊は、この「ことばの研究」という極めて幅広い学問領域に最初の一歩を踏み出すための良いきっかけとなります。これらの本を出発点にして「ことば」に対する理解を深めれば、言語文化学科でのより深い学びにつながるでしょう。

スクーリング情報⑨【日中韓の言語文化】課題図書紹介

【日中韓の言語文化】課題図書紹介       担当:原貴子先生

1.石川九楊『日本の文字―「無声の思考」の封印を解く』(2013年、筑摩書房)

 著者は、日本語の特徴は、漢字、ひらがな、カタカナの三種類の文字を使用することであると捉えています。それはすなわち、日本語には、三種類の文体があることを意味すると述べています。そして、この三種類の文字・文体を用いることが、日本文化にどのような影響を及ぼしているか、という問題意識で本書は描かれています。
 とすると、著者の主張を理解するために、まずは、著者が、漢字、ひらがな、カタカナをどういうものと捉えているか、をおさえる必要があります。つぎに、漢字、ひらがな、カタカナが用いられた文体が、それぞれどのような表現領域で用いられると著者は考えているのか、を確認していきましょう。ちなみに、書名に「無声」というあまり聞き慣れないことばが見られますが、このキーワードは、漢字の特性と関わりがあります。
 日本語における三種類の文字・文体について取り上げる際に、著者は、西洋由来の言語学(例えば、「文字は表意文字から表音文字へと発達した」とする見解など)をそのまま適用することや、それ以外の通説(例えば、「漢字は、形、音、義をもつ」とする見解など)を鵜のみにすることを批判します。また、東アジアの漢字を用いる文化に言及する際も、アルファベットを用いる文化と対比させていきます。ですので、著者の見解を理解する前段階として、反論・比較の対象とされているものも併せて確認し、双方の相違点を明確にしましょう。その際に、著者の用いる語の定義は何か、を意識してみると整理しやすくなると思われます。
 著者の見解の一部を紹介しておきます。例えば、これまでもひらがな表記を用いたことによって和歌において掛詞が盛んになったということが指摘されてきましたが、著者は、それは「ひらがなの本質から生じてきた一種の字韻」であるなどとより積極的に捉え直します。あるいは、現在流通している「文字」という概念のあり方に疑念を有する著者は、「誰も文字なんて書いてはいない」「決して漢字やひらがなやアルファベットが文字であるということにはならない」と主張します。
 こうした独自性のある興味深い見解が展開されていきます。本書を通じて、何気なく捉えていた「文字」について改めて考えたり、漢字、ひらがな、カタカナを有する日本語の豊かさなどが感じられたりすると思われます。

2.倉本一宏『戦争の日本古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで』(2017年、講談社)

  本書は、倭国および日本が、北東アジアの国々との間にどのような戦争を行い、また、諸外国の侵攻にどのような対応を示したか、を追究したものです。それを通じて、北東アジア諸国が日本をどう見ているかを理解し、さらには、そうした眼差しが成立した歴史的背景を把握することが目的になっていると捉えられます。
 なぜ戦争に焦点化して北東アジアにおける古代史を振り返るのか、について、著者には、明確な考えがあります。それは、「近代日本のアジア侵略は、その淵源が古代以来の倭国や日本にあった」と考えていることです。著者が「近代日本のアジア侵略」の「淵源」と見なしたものは、具体的にはどのようなものでしょうか。著者によれば、日本において形成されてきた「小帝国志向」「東夷の小帝国」、ならびに、朝鮮半島諸国、とりわけ「新羅に対する敵国視」が該当するということです。この二種がどのようなものかを理解することが、重要になってきます。
 さて、本書は、四~五世紀の対高句麗戦から十一世紀の刀伊の入寇までを時系列で扱い、さらには近代における戦争を考えるために、十三世紀の蒙古襲来と十六世紀の文禄・慶長の役が追加されています。
 このような流れがわかりやすく整理されています。しかし、それにもまして魅力的なのは、多くの先行研究を踏まえた上で著者の見解が示されていることです。問題にされていることに対する先行研究の見解と著者のそれがどう重なり異なるのか、についても意識してみましょう。また、それぞれの見解を支える根拠は何か、についても考えてみるとより深まるかもしれません。
 その他には、著者の歴史を扱う手つきにも注目してみてください。例えば、著者は『日本書紀』の記述に対して、「このような都合のいい筋書きが、はたして史実と考えられるであろうか」と疑問を呈します。ここから、「史実」とは何か、歴史として叙述されるとはどういうことか、という問題が浮上します。
 本書を通じて、現代にも繋がるものとしての古代における北東アジア諸国との関係性を知ることができ、さらに、歴史における事実とはどういうものか、といった問題意識なども学ぶことができると思われます。

スクーリング情報⑧【日本語学と日本語教育】課題図書紹介

【日本語と日本語教育】課題図書紹介         担当:佐藤真紀先生

 日本で生まれ育ち、子どものときから日本語を母語として育ってきた人にとって、「日本語」は当たり前のものですね。苦労して学んだ経験もありませんし、普段話すときに日本語の文法や表現を意識することもあまりないでしょう。
 では、日本語が正しく使える日本人ならば、誰でも日本語を教えられるのでしょうか。答えは”No”です。日本語が使えることと、日本語を「外国語として」外国人に教えるということは、全く別ものなのです。

 日本語を学ぶとき、どこがどう難しいのでしょうか。日本語にはどのような特徴があって、それをどう伝えればいいのでしょうか。普段あまり意識して言葉を使っていないので、改めて聞かれると答えられないことが多いです。例えば「『おいしそうだ』と『おいしいそうだ』はどう違いますか?」と聞かれたら、戸惑いませんか。この2つは意味が大きく違うので、比べること自体に違和感があります。でも形を見れば「い」があるかないかの違いしかありません。似ていると思うのも当然でしょう。
 今回取り上げる本は、どちらも荒川洋平さんという方が書いた本です。著者自身、日本語教員であり、その実体験をもとに、日本語とはどういうものか、日本語を教えるとはどういうことか、日本語教員を目指す人が知っておくべきこと等が書かれています。
 日本語そのものに関心がある人は『日本語という外国語』から、日本語教育の様子が知りたい人は『もしも・・・あなたが外国人に「日本語を教える」としたら』から、読んでみるといいでしょう。どちらも、日本語教員という仕事の難しさ、面白さ、楽しさを味わうことができます。
 日本語教員には、学習者の視点に立って日本語を見ることが重要になってきます。この本を読んで、その第一歩を踏み出してください。

スクーリング情報⑦【独仏の言語文化】課題図書紹介

【ことばとコミュニケーション】課題図書紹介     担当:宮本直規 先生

 フランス文化の紹介は、文学、絵画、音楽,映画などの芸術を題材として無数の書物が書かれてきましたし、また食文化やファッション関係の解説書も数多く存在します。しかし、それ以外の関心を持って留学した人が、実際にフランスに住んでみて感じたギャップやカルチャーショックを正直に記した本は意外に少ないのではないでしょうか。
 本書は、フランスの社会経済史を専門とする若い研究者がフランスに長期滞在したときに感じた、日常生活の疑問を率直に語り、その答えを探る内容になっています。いわば、日本の一般市民の視点を保ちながらのフランス体験記であり、知ったかぶりや無条件のフランス礼賛とは無縁です。
 一読すれば、頑固なフランス人気質が、グローバル化の波の中でどのような軋轢を引き起こしているのか、よくわかりますし、日本の社会と比較することによって、フランスの現状だけではなく、日本社会の常識を考える視点も与えてくれます。

 一方、「ドイツの言語文化」の課題図書は、『知ってほしい国ドイツ』(新野、飯田、梅田編著、高文研、2017、1700円)という本です。ドイツの文化や歴史について、入門者にも分かりやすく解説した本は現在数多く出版されていますが、この本もそうしたものの一つです。
 ドイツのペット事情やビールへのこだわりといった「ドイツ文化あるある!」的な記述でスタートし、第2次世界大戦を境としたその前後のドイツ文化の点描が続き、ヒトラーとナチズムについての章を経て、難民問題、脱原発、EUとの関係といった極めて現代的なテーマによって締めくくられます。特に第2次世界大戦前夜からヒトラー、ナチス、東西ドイツ、ドイツの再統一という近現代史の流れは、言語文化を志す皆さんには是非とも読んでおいてもらいたい部分です。
 「知ってほしい」というタイトルが示すとおり、ドイツのことを「知りたい」と思っているみなさんには格好の入門書であることは確かなのですが、個々の部分では入門書の枠を超えた、突っ込んだ記述になっていることもまた事実です。しかし巻末には時代毎のドイツの地図や簡単な年表もついていますし、その気になればネットやスマホを駆使して未知の概念を調べながら読み進むことも可能なはずです。今のうちに、ぜひそうした読書のあり方にもチャレンジしてみて下さい。

スクーリング情報⑥【ことばとコミュニケーション】課題図書紹介

【ことばとコミュニケーション】課題図書紹介     担当:小林 睦 先生

「ことばとコミュニケーション」に関する書籍として私がみなさんに推薦したのは、以下の2冊です。(1)平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書、799円)、(2)子安増生『心の理論 心を読む心の科学』(岩波科学ライブラリー、1512円)

(1)は「青年団」という劇団を主宰する劇作家・演出家の本です。著者の平田オリザ氏が書いた台本は、中学国語の教材にもなっているので、皆さんも接したことがあるかもしれません。この本には、その彼が、色々な小学校や中学校で演劇ワークショップを行なうなかで、気づいたことや考えたことが記してあります。具体的に言えば、本書には、コミュニケーション能力を過剰なまでに求める、現代社会の風潮に対する疑問が示されています。日本のコミュニケーション教育では「わかりあう」ことに重点がおかれているが、むしろ「わかりあえない」ところから出発するコミュニケーションが大事なのではないか。もし「心からわかりあえなければコミュニケーションではない」とするなら、そこでは、心からわかりあう可能性のない人を排除する論理が働くのではないか。しかし、実際には「心からわかりあえないんだよ、すぐには」、「心からわかりあえないんだよ、初めからは」と筆者は述べます。簡単に「わかりあう」ことを前提としない。その点で、本書は、コミュニケーション能力の必要性を説くばかりの多くの書物とは異なる視点から、私たちが考えるための示唆を与えてくれる書物です。

(2)は、他人の心を理解する仕組みについて、認知科学的な観点から書かれた著作です。議論の素材となるのは、自閉症児の研究が明らかにした様々な事柄です。自閉症は発達障害の一つであり、かつて主張されたように、子供本人の努力不足や母親の育て方などが原因で生じるものではありません。今日では、自閉症は脳の中枢神経の機能障害により生じると推定されていますが、詳しい原因はまだわかっていません。自閉症の特徴は、(a)他人の気持ちを理解することが苦手である、(b)ことばの発達が遅く、身振りや表情を使うのが得意でない、(c)同じ動作を反復して行なうことを好み、新しいことをやりたがない、といったものです。こうした特徴をまとめるならば、自閉症の人は、言語的あるいは非言語的なコミュニケーションに問題がある、と言うことができます。これらの研究から明らかになってきたことは、他人の気持ちを理解するためにはどのような心の働きが必要か、ということです。コミュニケーションが苦手であるのはなぜなのか。その仕組みを明らかにすることで、本書は、コミュニケーションの意味について、新たな側面から光をあてた書物だと言えるでしょう。

原典講読(2018年度)のシラバス(予備登録資料)

楊 世英(前)

楊 世英(後)

フリック(前)

フリック(後)

金(前)

金(後)

高橋(前)

高橋(後)

文(前)

文(後)

秋葉(前)

秋葉(後)

ワトソン(前)

ワトソン(後)

小林(前)

小林(後)

アンドリュース(前)

アンドリューズ(後)

宮本(前)

山崎(後)(いまのところ内容は未定です。分かり次第お知らせします。その段階で志望の変更がある場合は申し出てください。)

スクーリング情報⑤【英米の言語文化】課題図書紹介

【 課題図書紹介】 ― 英米の言語文化 ―      担当:井上正子 先生

「英米の言語文化」のジャンルでは、イギリスとアメリカに関係する文化、文学、歴史、思想、政治、経済など様々なことを学ぶことができます。関連する科目として、「英米文学史(2年次)」、「英米の言語文化(2年次)」、「英米文学(3年次)」、「原典講読(3年次)」、「言語文化学演習(3年次)」、「総合研究(4年次)」が用意されています。ことばとしての英語の言語表現と機能を学び、それと同時にことばの背後にある意味をさまざまな視点から分析・研究することによって、英米の言語文化のもつ特質を学ぶことができます。

次に推薦図書について簡単に紹介します。

(1)池上彰著『そうだったのか!アメリカ』(集英社) は、よくあるアメリカの紹介本とは違い、池上氏が現代のアメリカが抱える問題を分かりやすく解説しています。9章で構成されていて、アメリカの「宗教」、「連合国家」、「帝国主義」、「銃」、「裁判」、「移民」、「差別」、「経済」、「メディア」について、豊富な資料をもとに多角的な視点から解説されています。読んだあとに読者が「そうだったのか!」と驚かされ、アメリカを十分に理解できる内容になっています。

もう一つの書物は、(2)『「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国』(NHK出版新書) です。著者はコリン・ジョイスという英国人ですが、大学卒業後に日本とアメリカに18年以上も滞在した経験を持っているため、自分の国の文化―例えば、お酒やパブ、コーヒー文化、歴史、イギリス英語とアメリカ英語の違いなどを、日本やアメリカの文化と比較しながら客観的に説明しています。ただ単に自国の文化の優れた点を強調している他の書物と違い、ユーモアを交えてイギリスの良いところも悪いところも均等に説明している入門書です。
(1)と(2)の書物は、本学の言語文化学科で他国の言語と文化を学ぶ方法のヒントを与えてくれる非常に役立つものです。

スクーリング情報④【考えること・表現すること】課題図書紹介

課題図書紹介【考えること・表現すること】(担当:文景楠先生)

「考えること」と「表現すること」は、どちらもありふれたことに思えます。この文章を読んでいる皆様は、日々何かを考え、そして表現しているはずです。例えば、「お腹が空いた」と頭で考え、「ご飯が食べたい」と誰かに向かって表現することがそうです。すでにできている当たり前のことなら、大学に入ってまで学ぶ必要はあるのでしょうか?

とはいえ、「じゃあ「考えること」や「表現すること」ってなんですか?」とまじめに聞かれると、なかなかいい答えは浮かんできません。それに、「きちんと考えなさい!」や「分かるように表現しなさい!」といった小言を聞いた経験を思い出してみてください。そういうときに、いったい何をどうすればいいのかがわからず、困ったことはありませんか?だとすれば、私たちは結局、「考えること」や「表現すること」が本当は何なのか、よくわかっていないようです。

課題図書:
野矢茂樹『はじめて考えるときのように』
山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』

学院で先に学んでいる大学生のお姉さんお兄さんたちも(本当のことをいうと私も)、「自分の考え」をもち、それを「他人にわかるように表現」するために苦労しています。今回の課題図書二冊を通して皆様にお願いしたいのは、「考えること」と「表現すること」という一見当たり前でありふれた事柄に対する自分の無知を認め、それに少しばかりゆっくり向き合ってみることです。ちなみに、どちらの本も高校生の皆様に十分楽しく読んでいただけるものを選びました。怖い先生が書いた本じゃないので、安心して取りかかってください。

二冊の本は、スタイルがかなり違います。共通しているのは、どちらにも「こうすれば満点!」といえるような安直な答えは用意されていないという点です。そもそも大学での学びは、正解が用意されているテストのようなものではないのです。大学の先生は、以前にも増して皆様に「君の考えは?」や「もっときちんと表現してくれませんか?」と聞いてくるでしょう。まだイメージがわかないかもしれませんが、とりあえずこの二冊を読み、「すっきりしないな。でもなんだか面白そう!」という気持ちで大学にいらしてください。

後は色々とおしゃべりしながら、一緒に「考えること」や「表現すること」とは何かを考え、表現していきましょう。

スクーリング情報③【ことばの習得と教育】課題図書紹介

課題図書紹介【ことばの習得と教育】(担当:渡部友子先生)

1.『外国語学習に成功する人、しない人』白井恭弘著

「何年も勉強しているのに英語が使えるようにならない」という挫折感を多くの日本人が抱えています。しかし一方で、英語を使って国際的な舞台で活躍する人もいます。成功と挫折を分ける要因は何なのでしょうか。そして、どういう学び方をすれば、英語が身につくのでしょうか。この本は、これらの問いに答えてくれます。

「これさえやれば英語が話せる」というような宣伝を見聞きすることがありますが、実は科学的根拠に基づいたものは少ないのです。外国語習得の研究者である著者は、これまでの研究で分かったことを紹介しながら、学習のコツを具体的に提示しています。「なぜ」を理解し「どう」すればいいかが分かれば、学習はしやすくなると思います。この本は、大学入学後も継続して学ぶ英語と、新たに学ぶ第二外国語の学習を支える一冊です。

 

2.『「達人」の英語学習法』竹内理著

「外国語は幼いうちに始めた方がよい」とよく言われます。実際、中学校で学び始めて最終的に高いレベルの英語力を手に入れる人が少ないことは、調査でわかっています。しかしこのことを逆に見ると、少数だが存在する、とも言えます。「達人」と呼ぶべきその少数派に、この本は注目します。彼らは一体、どのような学び方で英語をマスターしたのでしょうか。

第1~2章は、外国語習得に影響を与える様々な要因(年齢や性格など)について、研究で判明していることを紹介します。この部分は、白井氏の著書と一部内容が重なります。第3~5章は、達人たちが実際に行なった学び方の共通点を導き出し、効果的な学習方法を探り出します。そこからわかるのは、短期間で楽に英語が身につくような魔法はない、でも努力の仕方に秘訣はある、ということです。日本に生まれ、日本で普通の英語教育を受け、長期の留学経験もない人が、どうして英語の達人になれたのか、あなたも知りたくありませんか?