スクーリング情報(11)【表現と文化】

【課題図書紹介】― 表現と文化 ―      担当:山崎冬太先生

 言語文化学科では、言語に関わる文化のほかに、映像に関わる文化の研究もできます。具体的にいえば、映画論、演劇論、写真論、広告論などです。

 現代生活において、ことばだけに頼らないコミュニケーションの比重は高まるばかりです。多様化するメディア上にあふれている映像をいかに読み解くか、掘り下げて考察してみませんか。たとえば、写真について考えてみましょう。読んで字のごとく「真」を「写す」ものと思われがちな写真。真実を伝えるものだからこそ、写真は新聞やテレビの報道になくてはならないものですし、日常生活においても、写真は個人的な思い出を正確に保存するために利用されています。

 しかし、写真はさまざまに加工することができます。芸術的な表現の手段としても使われますし、広告や政治的プロパガンダにおいては、大衆の意識や行動を操作する目的でも使われうるのです。その影響力が大きいだけに、写真とどのようにつきあっていくべきかは、広く深く考察するに値するテーマです。関心のある人は、ぜひ今橋映子『フォト・リテラシー』(中公新書)を読んでみてください。

 次は、四方田犬彦『日本映画110年』(集英社新書)の紹介です。
 映画が1885年にフランスで発明されてから、すでに130年以上経っています。その間めまぐるしい科学技術と表現技法の進化を経て現在の映画芸術があります。日本映画の歴史もそれ相応の歴史を持っています。さまざまなメディアで動画を目にしない日はありませんが、すべてが1世紀ちょっとの歴史の中で展開してきた多様な方法論の結実なのです。大学生として映画を考察するというとき、動く映像の歴史的軌跡を念頭におくことはきわめて有効です。初期の無声映画から近年のCG映像やアニメまで、本書で日本映画の歴史を垣間見ることは、映像をより意識的に見るためのきっかけになるはずです。とりわけ日本映画の全盛期を築いた溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男、黒澤明たちの遺産が、宮崎駿らのジブリ作品や、北野武監督、是枝裕和監督たちにどのように受け継がれているかを考えてみましょう。